ディアハンター

ディアハンター(1978年)
監督:マイケル・チミノ
主演:ロバート・デ・ニーロ
ジョン・カザール
クリストファー・ウォーケン
メリル・ストリープ


=感想=

この映画を見てて、戦争について違った視点で、改めて考えさせられた。
今までの戦争映画は、人の命について考えることが多かったんだ。
母国のためとは言え、無駄に人が死んでいってる気がして・・・
強い憤りを覚えることが多かった。

でも、この映画はちょっと違う。
つい昨日まで仲間と楽しい時間を過ごしていたのに、
召集の前夜、いつもと同じように寝てしまったために、
新しい朝を迎えてしまったために、極限の世界に送り込まれてしまうの。

さっきまで、正常だった友人が、恐怖で精神がおかしくなっていく。
それを目の当たりにする・・・そんな状況でも自分を見失わない強さ。
私には、考えられない状況だった。
昨日までのあの楽しい日々は、なんだったの?
帰還してからも、元の生活に戻れない兵士達。
ここまで精神的に追い詰める戦争の意味ってなんだろう?
こんな犠牲を払ってまで犯す戦争は、人間の大罪だと私は思う。


=自分のための覚書=

ペンシルバニア州の製鉄所で働くマイケル、スティーブン、ニック、スタン、アクセルは
職場を離れても、仲が良かった。
デ・ニーロが演じるマイケルは、5人の中でもニックを一番信用していた。

月曜からベトナムに召集がかかったマイケル、ニック、スティーブンの
送別会とスティーブンとアンジェラの結婚式を兼ねて
街で盛大にパーティーが開かれた。
パーティーへ行く前に、マイケルにニックが「ベトナムへ行くと言うのに
スティーブンは結婚、俺達は猟。どうかしてるよ。」という。
でも、マイケルは「俺は山で死ねるなら本望。鹿は1発でしとめてやらないと。」
「2発は恥だ。」といい「ベトナムは恐いか?」とニックにたずねる。
ニックは「恐い」と・・・「木が好きなんだ。山の木は1本1本違う。それがいい。」
と話し、そんなニックに「猟はお前とじゃなきゃ!」と言う。

マイケルは、パーティーの後、全裸で街を駆け巡る。
なんだか分からない不安が、彼をそうさせていた。
ニックは、話したいことがあると懸命にマイケルを追う。
追いついたマックは、マイケルに「ベトナムで万一のことがあったら
必ずここに連れて帰ってくれ。約束してくれ。」と頼む。

翌日彼らは、最後のDEER HUNTERに行く。
マイケルは、見事鹿を撃ち抜いた。大喜びで、ニックの店に帰って来る
5人だったが、月曜からのベトナム行きが迫っていることを痛感するのだった。

ベトナムへ向かった三人は偶然にも、戦場で再開する。
しかし、攻勢のベトナム兵に捕虜としてつかまってしまった。
そこでは、5人で笑っていた日々が信じられないほどの地獄が
待ちうけていたのだった。
川沿いの小屋の下につながれた三人。
捕虜が代わる代わるベトコンに階上に連れて行かれ、
捕虜VS捕虜のロシアンルーレットが行われていたのだ。
ベトコンは、どちらが死ぬかお金をかけて楽しんでいる。

そんな状況を階下で知らされるスティーブンは、恐怖におびえる。
マイケルは、気をしっかり持つよう、スティーブンに声をかけ支えるが
もはや、彼は正気でなくなっていた。
いよいよ、スティーブンVSマイケルがロシアンルーレットで
戦うことになってしまった。
スティーブンの恐怖は頂点に達していた。おびえる彼にマイケルは
「肝っ玉を見せてやれ!」と言い放つ。その一言で引金が引かれた。
幸い、銃口が外れていたため、彼の頭をかすめていったが、
そのままスティーブンは池の中に閉じ込められてしまう。
そして、ついにそのゲームは、マイケルとニックに及んでしまう・・・

マイケルはベトコンに「三発でやるよ!」と提案。
まさに賭けだった。1発目がマイケル。2発目がニック。
映画だからその2発は不発で終わってくれた。3発目をマイケルが
撃とうとしたとき、彼は銃口をベトコンに向け発砲。ニックも
すかさずベトコンの銃を取り、二人でベトコンを撃ち放す。
スティーブンを池から出し、その場から脱出する3人だった。
そんな3人の頭上に幸運にも救出用のヘリが。ニックは救出されたが
スティーブンが、力尽きヘリから転落。マイケルも助けるために
ヘリから飛び降りてしまう。転落時に足を岩にぶつけて骨折したスティーブンを
マイケルは背負って山中を歩き街中に出て、スティーブンを病院へ送るよう
指示して、自分は街中へ消えていった。こうして3人はバラバラになってしまう。

ニックは、病院へ搬送されていた。
愛していたリンダに会いたい気持ちが募る。
彼はペンシルバニアに電話をするが、交換台に「もういいんだ。」と言って
受話器を置いてしまった。その後、街中へ行きマイケルを探す。
すると2発の銃声が・・・そこは、賭博場だった。
外にいたオーナーらしき男に、中へ連れていかれるとあの時みた
地獄絵が再現されていた。「ロシアンルーレット」
ニックは耐えられず、暴れてしまう。マイケルがその場にいたが
追いかけても追いつくことができなかった。彼は、オーナーならしき男の
車に乗り、どこかへ消えてしまったのだ。

その後マイケルは、無事アメリカに帰還。そんなマイケルを歓迎しようと待つ
友人達。なぜかそんな彼らを、マイケルは避け、一人モーテルに身を隠す。
マイケルもリンダに会いたかった。一人、財布の中にあるリンダの写真を
眺めるマイケルだった。翌朝、集まっていたみんなが帰った頃に、
リンダに会いに行くマイケル。嬉しくて仕方ないはずのマイケルに
無邪気に「ニックに編んでるの!」とセーターを見せるリンダだった。

その日、スタンやアクセルと再会するマイケルだったが、そこでスティーブンが
帰還していたことを耳にする。
マイケルは急いで、スティーブンの妻のアンジェラに会いに行くが
彼女は、憔悴していた。口を利くこともできず、スティーブンの問いかけにも
筆談で答える彼女。

マイケルは、後日スティーブンに会いに病院へ行くが、
両足、左腕がなくなっていた。スティーブンが見せたいものがあると言うので
見せてもらうと「なぜか、サイゴンから送られて来るんだ。」と
米ドル札が。それをみたマイケルはすぐにこれがニックからだと言うことを悟る。
マイケルはニックを探すために、再びベトナムへ向かった。
マイケルの読み通り、ニックはベトナムでロシアンルーレットの賭博場に
いたのだった。マイケルは、オーナーにニックと勝負させるよう
申し出た。勝負の前に偶然ニックを見つけ、声をかけてみるが
ニックは廃人と化していた。マイケルを見ても、反応もせず唾を吐きかける始末。
薬漬けにでもされていたと思われるほどのうつろな目。
銃口を向けることを恐怖と思っていないニックに、マイケルは
記憶を呼び起こすよう、言葉を投げかけた。
「これがお前の望みなのか?愛してる。一緒に帰ろう。話をしてくれ!」と。
それでも、反応しないニックにマイケルは「覚えているか?木の話しだ。」と
問いかける。すると初めて反応したのだった。「1発か?」
そう言い残し、彼はロシアンルーレットでこの世を去ってしまう。
親友の目の前で。「1発」で・・・

お葬式を済ませた仲間は、久しぶりに再会するが
戦争が変えてしまった仲間の人生に、言葉を発することができなかった。
妙に気を遣い合い、ぎこちなく動く仲間・・・
そんな中アンジェラが「今日は暗い日ね~」と言葉を発する。
調理場からはアクセルが泣かない様に自らを奮い立たせるように
優しくGOD BLESS AMERICAの鼻歌を歌う声が。
その鼻歌に合わせて、リンダが歌い始め、やがてみんなで合唱した。
全員が席につき、明るく乾杯をする。
2度と帰らぬニックのために・・・



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